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HOME積雪寒冷地の設計作法 > 第3章 外部を設計する

敷地内通路

敷地内通路は、屋根からの落雪があっても被害が生じないよう建物から距離をおき、照明柱や樹木からの落雪にも注意して配置を考えます。
通路の除雪は除雪機械による場合が多いため、急なカーブやクランクを避けた計画とすることが望ましいです。
また、立ち上がりのある道路縁石は除雪機械で破損されることが多いので、敷地内通路では、事故防止と雨水処理ができていれば、道路縁石の立ち上がりはないほうが破損等の心配がないといえます。

安全なアプローチ

舗装材料は、転倒事故等を起こさないよう表面が粗面なものを選定します。積雪した路面の勾配は、一般的に3%が限度でと言われており、これを超す勾配になるときは、融雪設備により雪・氷を融解するか、歩道ならば階段とするのが望ましいです。
融雪設備による場合は、融けた水が再凍結しないよう、水下側に近接して排水側溝を設け、車椅子の使用が予想される通路には、融雪装置を設置するのが望ましいです。

カバードウォーク・コリドール・雁木

雪に埋もれない歩行者専用通路を確保する上でカバードウォークやコリドールを設けることが有効ですが、側面からの雪の吹き込みを防ぐ手立てが必要です。
屋根の高さを使い勝手上支障のない範囲でできるだけ低くする、屋根から幕板状の下がり壁を設ける、風上側のみに壁を設ける等して雪の吹き込みを防ぐ方法もあります。
勾配屋根の場合には、屋根の融雪水が路面に落ちて凍り、転倒事故を招いたりしないよう屋根排水に留意します。また、屋根からの落雪を溜めるスペースが必要な場合もあります。

雪に配慮した配置計画の例

路面の材料と勾配

歩道の路面材料は、アスファルトコンクリート(アスコン)が一般的ですが、歩行者の多い区間では雪が踏しめられて氷となる、いわゆるツルツル路面になりやすいでる。そのため、アスコン舗装では粒度が不連続なギャップアスコスンを用いて粗面の度合を高めたり、表面勾配を3%以下と緩くしたりします。
インターロッキングや洗い出し平板ブロック、レンガ等を使用する場合は、凍害による破損がされにくい吸水率の少ない材料を選定することが肝要です。
車道の積雪路面は、斜路では勾配を5%以下とし、それ以上の勾配になる場合にはロードヒーティングの採用を検討することも必要です。また近年、地下に浸透させる透水性のものが注目されていますが、凍上や雪に混ざった粉塵による目詰まり等の課題が残っており、寒冷地ではまだ採用の実績が少ないといえます。

ロードヒーティング

ロードヒーティング設備には、イニシャルコスト(設置費用)のほかにランニングコスト(運転費用)が必要となるので、設置する・しない、あるいは設置範囲や熱源の選択について、建物利用者の利便性や頻度等との兼ね合いで決定する必要があります。
ヒーティングの熱源は、電気、温水(灯油・ガス)方式に大別されます。電気方式は、電熱ヒーターを埋設するもので、比較的小規模な布設範囲に用いられます。
ヒーティング線(融雪発熱線・融雪パイプ)の深さは、地表から浅すぎると線の周囲しか融雪せず、深すぎると効率が悪くなります。経験上、舗装面から8〜11cm程度(インターロッキング舗装では11〜13cm程度)とすると万遍なく融雪することができます。なお、ロードヒーティングされた歩道では、重車両が載るとヒーティング線が断線する恐れがあるので、堅固な路盤の構築や注意を促すサイン等が必要です。
その他、ヒーティングによって融けた水が、再凍結することなく流下するよう、融雪設備を施した排水溝や排水桝を近接して設けることが不可欠です。

歩道部の舗装断面(左) 駐車場の舗装断面(右)

駐車場の除雪

ロードヒーティングをした駐車場は、除雪作業が必要ないため楽ですが、イニシャルコストおよびランニングコストとも機械除雪より高くなります。
駐車していない状態で機械除雪がし易いショッピングセンター等の大型駐車場では、一般的に機械除雪としますが、駐車している状態での除・排雪が必要なマンションや月極め駐車場では、ロードヒーティングを採用する例が多いです。
機械除雪を採用する際の駐車場計画は、除雪車の走行ルートと除雪した雪を堆積する場所を計画することが基本となります。
その他留意することとして、縁石の破損を防ぐよう縁石位置にポールを設ける、雪で見えなくなる路面サインに変わる移動式のポールサイン(除雪作業時は移動させる)を用意する等があります。

雪の堆積スペースの例

高木と中低木

北海道の気候風土で生育可能な樹木は、本州に比べて種類も流通量も少なく、全道で生育可能な樹木もあれば、道南地方に限られる樹種もあえいます。
針葉樹としては、イチイ(オンコ)、アカエゾマツ等が代表的で、植栽時期は、5〜6月と8〜9月が望ましいです。広葉樹は、イチョウやハルニレ、カツラ等が代表的で、植栽時期は、5〜6月と落葉後の10〜11月が望ましいです。

芝生、カバープランツ

芝生は、ケンタッキーブルーグラスを主体とする西洋芝が一般的です。近年、芝生に代わって、維持管理の手間が少なく背丈もあまり大きくならないビンカミノールやクローバー(シロツメクサ)が用いられることも多いです。
なお、芝張時期は本州と異なり、真夏でも支障はありません。

雪害への備え

樹木の幹や枝を積雪による折れや曲がりから守るために、積雪前に縄やムシロで樹木を保護する冬囲い(雪囲い)を行います。成長した広葉樹や、プンゲンストウヒ等の樹形の針葉樹には冬囲いをしないことが多いですが、アカエゾマツ等は雪吊りのような対策を要し、これらの設置・撤去費用を毎年見込む必要があります。

看板、サイン等

外壁に取り付けた看板やサイン・装飾、屋上の広告塔等は、その上に積った雪が落ちて通行者に被害を与える恐れがあるため、雪が積らないよう上部に勾配をつける等の工夫をします。 また、雪が積らないよう外壁と一体化して計画するのもひとつの方法です。建物の入口等に設ける自立の看板やサイン、掲示板は、雪に埋って見えなくなると除雪機械で壊されたりする心配があるため、積雪量を考慮した高さとするか、ロードヒーティングをする通路面に設置する等の工夫が必要です。

外灯

外灯は雪が積っても埋れない高さのものを選定します。また、積った雪が固って落ちると危険なので灯具の笠に45度以上(理想的には60度以上)の勾配をつける等雪が積らない配慮をする必要があります。

屋根を架ける

屋外階段の最上部に屋根を設け、階段全体を積雪から守る手法は最も一般的で実施例も多く、ある程度の効果が期待できます。しかし、雪は常に垂直に降るとは限らず、階段周囲の開口部から横殴りの雪が侵入し床面に積もるので、万全とは言えません。

囲う

雪を防ぐには囲うことが望ましいですが、火災時に炎や煙から安全に避難するためには階段の周囲が外気に開放されている必要があります。防風板で大きく季節風を遮り、ルーバーや格子で細かく囲う等の組み合わせで雪の侵入を防ぐことが効果的です。ルーバーは、積った雪が階段内に落ちないよう勾配を外側に向ける等の細かい工夫も必要です。

雪を通す

段板の材料を、雪が通過してしまう程度に目の粗いメッシュやグレーチングでつくり、降る雪を下へ落してしまう方法もあります。安全な歩行を確保しつつ雪をある程度通すためには、5cm×5cm程度の隙間の大きさが目安になる。一番下に雪が溜るので、除雪や融雪装置等で雪を取り除く必要があります。

雪を融かす

床面に融雪設備を施し、雪を融かすのが最も確実に雪を取り除く方法ですが、融雪熱源のコストと装置の維持管理のコストが建物の生涯にわたってかかります。

組み合わせる

確実に避難経路を確保するには、これまでに述べた手法を組み合わせた「合せ技」が現実的で有効です。屋根を架け、床をメッシュにし、外周を防風板やルーバーで囲い、それでも雪が残る部分には融雪装置を施すといったように、いくつかの手法をうまく組み合わせ、安全で確実な屋外階段をつくることが設計者に求められます。