積雪寒冷地の設計作法

第1章 北海道の冬をデザインする


北海道の気候・風土

“北海道は冬期が肝心”といわれるほど冬は侮れません。
その北海道の冬は、地域によって気温や降雪・積雪量など大きく様相が異なります。大きく6つの地域に分けて、特徴をご紹介します。

区分 地域 特徴
道南 渡島半島南 冬期は日本海を北上する対馬海流(暖流)の影響で、道内他地域に比べて気温が高く降雪・積雪は少ない。
太平洋沿岸西部 日高・胆振 冬期の気候は道南と同様で、駒ケ岳を擁する内浦湾(噴火湾)沿岸は年間を通じて穏やかな気候である。
日本海沿岸 檜山地域から宗谷地域までの日本海沿岸 冬期は大陸からの北西季節風が強く、道内他地域に比べて降雪量が多い。夏期は晴れ間が多く海水温が高い。
太平洋沿岸東部 根室から十勝に至る太平洋沿岸 陸からの季節風が石狩山地(大雪山系)や日高山脈の西に大雪を降らせたあと乾燥した寒風となって吹き込むため、晴天が続き日本有数の日照時間を誇る反面、雪は少なく凍てつく、夏期は太平洋の湿気を含んだ南東の季節風が、南下した千島海流(寒流)で冷やされて海霧を発生させるので晴れ間が少なく気温・海水温は低い。内陸に近い帯広は海霧の影響がなく晴天が続く。
オホーツク沿岸 宗谷から根室に至るオホーツク海沿岸 山地と大雪山系、南に知床連峰や雄・雌阿寒岳の壁があり、年間を通じて乾燥した季節風が吹き込むため、道内他地域に比べて降水量・降雪量は少ない。北見市は年間日照時間が1744時間で全国の平均に近い。沿岸部は1月から3月にかけて流氷が接岸し厳しい寒さが続く。
内陸 天塩、北見、石狩、夕張山地や日高山脈等に囲まれた盆地 冬期は、放射冷却現象により著しく気温が下がり−30℃以下になることがある。道内他地域に比べて雪はやや多めだが風は穏やかである。夏期はフェーン現象により本州並みに気温が上がることがある。

北海道の冬のデザイン・事例1 【中標津中学校】

エコスクールの提案

寒暖差の激しい中標津町の厳しい自然環境を克服するためのさまざまな取り組み

中標津中学校概要
  1. 敷地内の既存樹木を極力残す配置計画
  2. 表面積の小さいシンプルな建築形体
  3. 熱負荷を低減し躯体を保護する外断熱の採用
  4. 木・アルミ複合サッシによる高気密高断熱サッシの採用
  5. 躯体を利用した自然換気ルートの設置
  6. 安定的な温度環境をつくるパネルヒーター、床暖房による放射暖房の採用
  7. 自然採光を有効活用するライトシェルフの採用
  8. 旧校舎の建築廃材の再利用

北海道の冬のデザイン・事例2 【北見信用金庫本店】

ダブルスキンによる自然換気と熱や光の利用

北見信用金庫本店 北見信用金庫本店

環境との積極的なコラボレーションから生まれた建築デザイン

  • 中間期の自然換気
    中間期には涼温の外気を室内に取り入れる自然換気方式を採用しています。自動制御装置により外気条件が自然換気に適することを検知すると、カーテンウォール下部の吸気口と頂部の排気口を同時に開放し、ダブルスキン内に煙突効果による上昇気流を発生させます。同時に各階コア側共用部に設置された窓が連動して開放され、新鮮空気を執務室内に流入させます。
  • 冬期の熱利用と結露防止
    外気温が低い冬期においても、南と西に向いたダブルスキン内は日射による取得熱量が期待できます。日射で温まった空気は空調機に取り込んで執務室の暖房熱源として利用します。外気温の下がる夜間にはカーテンウォールの給気口を閉じて気密性を保ち断熱性能を保持します。
  • 夏期の熱の制御
    夏期にダブルスキン内部の空気層が日射により過度に温度が上昇するのを避けるため、自動制御によりカーテンウォール下部の給気口と頂部の排気口を開放して煙突効果による上昇気流を発生させて換気します。
  • 自然光の有効利用
    カーテンウォールの乳白色ガラスからの拡散光を執務室内の明かりとして有効に利用します。室内の照明器具は自動調光装置によって適切な照度を保つよう制御し、エネルギーの節約を図っています。
北見信用金庫ダブルスキン (左上)中間期の自然換気  (右上)冬期のダブルスキンによる断熱
(左下)夏期のダブルスキンによる換気  (右下)自然採光のシミュレーション(夏至)

第2章 地域と敷地・建物の関係を設計する


風と日照に配慮した配置計画

風と日照に配慮した配置計画

風とアプローチ計画
冬の防風対策は、出入口の位置等、アプローチ計画に特に留意します。玄関は風が吹き込む方向を避けた位置が望ましく、南側のアプローチは、明るく暖かい玄関がつくることができるので一般的に受け入れられやすいといえます。

風とアプローチ計画

日照との関係

  • 日照と配置計画
    北海道は高緯度で太陽高度が低く、日影が長くなるとともに昼間時間が短くなる。このため、日影規制の対象時間は、本州が8時~16時であるのに対し、北海道では9時~15時に設定されています。また、隣棟間隔の算定に際しても、冬至の日照時間を、本州が4時間以上であるのに対し、北海道では3時間以上を確保することとなっています。

吹き溜まりと建物

吹き溜まりの原理

  • 吹き溜まりのできる場所
    風下側の建物のかげ、風上側の壁から少し離れたところ等、風速変化の激しいところに吹き溜まりができます。 吹き溜まりや雪庇は、でき始めるとどんどん成長し予想以上に大きくなるので注意が必要です。
吹き溜まりのできる場所

風の流れをデザインする

  • 雪を溜まらせない形状
    風の強い地域では、降った雪が飛ばされて部分的に大きな吹き溜まりをつくり、交通や積雪荷重に問題を起こす場合があります。駅前広場のような交通拠点では、雪を溜まらせない計画が必要となります。
  • 雪を溜まらせないディテール
    部分的に風速を高めて雪を飛ばす手法があります。図は、この効果を利用したパラペットの例です。
雪を溜まらせない形

第3章 外部を設計する


敷地内通路と除・排雪

敷地内通路

敷地内通路は、屋根からの落雪があっても被害が生じないよう建物から距離をおき、照明柱や樹木からの落雪にも注意して配置を考えます。
通路の除雪は除雪機械による場合が多いため、急なカーブやクランクを避けた計画とすることが望ましいです。
また、立ち上がりのある道路縁石は除雪機械で破損されることが多いので、敷地内通路では、事故防止と雨水処理ができていれば、道路縁石の立ち上がりはないほうが破損等の心配がないといえます。

安全なアプローチ

舗装材料は、転倒事故等を起こさないよう表面が粗面なものを選定します。積雪した路面の勾配は、一般的に3%が限度でと言われており、これを超す勾配になるときは、融雪設備により雪・氷を融解するか、歩道ならば階段とするのが望ましいです。
融雪設備による場合は、融けた水が再凍結しないよう、水下側に近接して排水側溝を設け、車椅子の使用が予想される通路には、融雪装置を設置するのが望ましいです。

カバードウォーク・コリドール・雁木

雪に埋もれない歩行者専用通路を確保する上でカバードウォークやコリドールを設けることが有効ですが、側面からの雪の吹き込みを防ぐ手立てが必要です。
屋根の高さを使い勝手上支障のない範囲でできるだけ低くする、屋根から幕板状の下がり壁を設ける、風上側のみに壁を設ける等して雪の吹き込みを防ぐ方法もあります。
勾配屋根の場合には、屋根の融雪水が路面に落ちて凍り、転倒事故を招いたりしないよう屋根排水に留意します。また、屋根からの落雪を溜めるスペースが必要な場合もあります。

雪に配慮した配置計画雪に配慮した配置計画の例

舗装とロードヒーティング

路面の材料と勾配

歩道の路面材料は、アスファルトコンクリート(アスコン)が一般的ですが、歩行者の多い区間では雪が踏みしめられて氷となる、いわゆるツルツル路面になりやすいです。そのため、アスコン舗装では粒度が不連続なギャップアスコンを用いて粗面の度合を高めたり、表面勾配を3%以下と緩くしたりします。
インターロッキングや洗い出し平板ブロック、レンガ等を使用する場合は、凍害による破損がされにくい吸水率の少ない材料を選定することが肝要です。
車道の積雪路面は、斜路では勾配を5%以下とし、それ以上の勾配になる場合にはロードヒーティングの採用を検討することも必要です。また近年、地下に浸透させる透水性のものが注目されていますが、凍上や雪に混ざった粉塵による目詰まり等の課題が残っており、寒冷地ではまだ採用の実績が少ないといえます。

ロードヒーティング

ロードヒーティング設備には、イニシャルコスト(設置費用)のほかにランニングコスト(運転費用)が必要となるので、設置する・しない、あるいは設置範囲や熱源の選択について、建物利用者の利便性や頻度等との兼ね合いで決定する必要があります。
ヒーティングの熱源は、電気、温水(灯油・ガス)方式に大別されます。電気方式は、電熱ヒーターを埋設するもので、比較的小規模な布設範囲に用いられます。
ヒーティング線(融雪発熱線・融雪パイプ)の深さは、地表から浅すぎると線の周囲しか融雪せず、深すぎると効率が悪くなります。経験上、舗装面から8~11cm程度(インターロッキング舗装では11~13cm程度)とすると万遍なく融雪することができます。なお、ロードヒーティングされた歩道では、重車両が載るとヒーティング線が断線する恐れがあるので、堅固な路盤の構築や注意を促すサイン等が必要です。
その他、ヒーティングによって融けた水が、再凍結することなく流下するよう、融雪設備を施した排水溝や排水桝を近接して設けることが不可欠です。

舗装断面歩道部の舗装断面(左) 駐車場の舗装断面(右)

駐車場と雪対策

駐車場の除雪

ロードヒーティングをした駐車場は、除雪作業が必要ないため楽ですが、イニシャルコストおよびランニングコストとも機械除雪より高くなります。
駐車していない状態で機械除雪がし易いショッピングセンター等の大型駐車場では、一般的に機械除雪としますが、駐車している状態での除・排雪が必要なマンションや月極め駐車場では、ロードヒーティングを採用する例が多いです。
機械除雪を採用する際の駐車場計画は、除雪車の走行ルートと除雪した雪を堆積する場所を計画することが基本となります。
その他留意することとして、縁石の破損を防ぐよう縁石位置にポールを設ける、雪で見えなくなる路面サインに変わる移動式のポールサイン(除雪作業時は移動させる)を用意する等があります。

雪の堆積スペース雪の堆積スペースの例

植栽と雪

高木と中低木

北海道の気候風土で生育可能な樹木は、本州に比べて種類も流通量も少なく、全道で生育可能な樹木もあれば、道南地方に限られる樹種もあります。
針葉樹としては、イチイ(オンコ)、アカエゾマツ等が代表的で、植栽時期は、5~6月と8~9月が望ましいです。広葉樹は、イチョウやハルニレ、カツラ等が代表的で、植栽時期は、5~6月と落葉後の10~11月が望ましいです。

芝生、カバープランツ

芝生は、ケンタッキーブルーグラスを主体とする西洋芝が一般的です。近年、芝生に代わって、維持管理の手間が少なく背丈もあまり大きくならないビンカミノールやクローバー(シロツメクサ)が用いられることも多いです。
なお、芝張時期は本州と異なり、真夏でも支障はありません。

雪害への備え

樹木の幹や枝を積雪による折れや曲がりから守るために、積雪前に縄やムシロで樹木を保護する冬囲い(雪囲い)を行います。成長した広葉樹や、プンゲンストウヒ等の樹形の針葉樹には冬囲いをしないことが多いですが、アカエゾマツ等は雪吊りのような対策を要し、これらの設置・撤去費用を毎年見込む必要があります。

植栽と雪

外部サイン等屋外工作物の雪対策

看板、サイン等

外壁に取り付けた看板やサイン・装飾、屋上の広告塔等は、その上に積った雪が落ちて通行者に被害を与える恐れがあるため、雪が積らないよう上部に勾配をつける等の工夫をします。 また、雪が積らないよう外壁と一体化して計画するのもひとつの方法です。建物の入口等に設ける自立の看板やサイン、掲示板は、雪に埋って見えなくなると除雪機械で壊されたりする心配があるため、積雪量を考慮した高さとするか、ロードヒーティングをする通路面に設置する等の工夫が必要です。

外灯

外灯は雪が積っても埋れない高さのものを選定します。また、積った雪が固って落ちると危険なので灯具の笠に45度以上(理想的には60度以上)の勾配をつける等雪が積らない配慮をする必要があります。

屋外階段の雪対策

屋根を架ける

屋外階段の最上部に屋根を設け、階段全体を積雪から守る手法は最も一般的で実施例も多く、ある程度の効果が期待できます。しかし、雪は常に垂直に降るとは限らず、階段周囲の開口部から横殴りの雪が侵入し床面に積もるので、万全とは言えません。

囲う

雪を防ぐには囲うことが望ましいですが、火災時に炎や煙から安全に避難するためには階段の周囲が外気に開放されている必要があります。防風板で大きく季節風を遮り、ルーバーや格子で細かく囲う等の組み合わせで雪の侵入を防ぐことが効果的です。ルーバーは、積った雪が階段内に落ちないよう勾配を外側に向ける等の細かい工夫も必要です。

雪を通す

段板の材料を、雪が通過してしまう程度に目の粗いメッシュやグレーチングでつくり、降る雪を下へ落してしまう方法もあります。安全な歩行を確保しつつ雪をある程度通すためには、5cm×5cm程度の隙間の大きさが目安になる。一番下に雪が溜るので、除雪や融雪装置等で雪を取り除く必要があります。

雪を融かす

床面に融雪設備を施し、雪を融かすのが最も確実に雪を取り除く方法ですが、融雪熱源のコストと装置の維持管理のコストが建物の生涯にわたってかかります。

屋外階段の雪対策

組み合わせる

確実に避難経路を確保するには、これまでに述べた手法を組み合わせた「合せ技」が現実的で有効です。屋根を架け、床をメッシュにし、外周を防風板やルーバーで囲い、それでも雪が残る部分には融雪装置を施すといったように、いくつかの手法をうまく組み合わせ、安全で確実な屋外階段をつくることが設計者に求められます。

第4章 屋根と防水を設計する


屋根の形状と積雪

陸屋根

陸屋根では、積雪量と風の状況により、特定方向にパラペットから雪がはみ出す雪庇ができ、これが落下して人や車両に危害を及ぼすことがあるので注意を要します。(「敷地内通路と除・排雪」参照)。パラペットの立ち上がりを高くすることで雪庇の形成を少なくすることができ、札幌では、パラペット高さを経験的に60cmとする例が多いです。

陸屋根

勾配屋根

金属葺き等の勾配屋根は、気温や積雪状態によっては屋根面の雪が一気に滑落することがあるので、屋根からの落雪範囲を想定し、隣地からの適切な後退距離を確保する必要があります。
また、落雪範囲内には掃き出し窓、出入り口、通路、駐車場、植栽等の設置は避け、敷地の状況によりやむを得ずこれらを設ける場合は、屋根に雪止めを設け落雪を防止します。

勾配屋根勾配屋根の設計上の注意点

勾配屋根の葺き方と雪

  1. 急勾配屋根
    • 屋根勾配が60度以上の場合、屋根面に積雪しないとして扱うのが一般的で、市街地においても適用できますが、屋根からの落雪に対する注意が必要です。
    • 横葺きの場合、落雪の仕方は、横方向の細かい段により雪が割れながら落ち、落雪飛距離は比較的小さいです。
  2. 緩勾配屋根
    • 気温が低いとき 落雪しやすいですが、屋根面で氷になると、はぜが抵抗となり落雪しにくくなります。
    • 落雪飛距離が大きいので敷地に余裕が必要です。
    • 緩勾配の場合、軒先に雪が固まり、雪庇や巻き垂れ、スガ漏れの原因になる場合があります。
    • スガ漏れを防止するには、小屋裏換気を十分に行い軒先の氷堤(堤防状にできる氷。水をせき止めるのでスガ漏れの原因になる)ができないデティールにします。

屋根の雪と落雪飛距離

落雪による影響

勾配屋根の軒先と外壁面との距離が十分でないと、軒先に形成されたツララ、巻き垂れ、雪庇等が落下して、外壁面や開口部を損傷することがあります。
勾配屋根の軒下に落下した雪が徐々に堆積して雪の山ができ、さらにその上へ屋根からの雪氷が滑り落ちることで、表層ナダレ状態で思わぬ範囲へ飛び出すことがあります。軒下の堆雪スペースには、このようなことも想定して十分なゆとりをもたせなければなりません。

勾配屋根屋根からの落雪の飛出し

落雪飛距離

雪が落下する地点の軒先からの距離を「落雪飛距離」と呼びます。落雪に備えた堆雪スペースを計画する場合、落雪飛距離の検討が必要となります。落雪飛距離は、屋根勾配θと軒先の高さHから概略値が求められますが、雪質、風速・風向、屋根面の摩擦等も関係し、正確な予測は困難なので、ゆとりを持った計画が望まれます。

勾配屋根屋根勾配と落雪飛距離

屋根のトラブル/ツララ、スガ漏れ、雪庇、巻き垂れ

ツララ

ツララは、金属板葺の勾配屋根に積もった雪が室内の暖房熱で融けて流下し、軒先で冷やされてできるもので、天井裏面に断熱材を厚く敷き置くとともに、屋根裏を外気温に近い状態に保つよう換気することで防止します。
ツララによる被害には、その成長により生じるスガ漏れと、ツララの落下による人や物等への被害、ツララによる軒先の破損等が挙げられます。

勾配屋根ツララの発生

スガ漏れ

ツララから氷堤(氷のダム)が発生してスガ漏れに発展し、経年とともに屋根葺き材の破損や屋根裏への漏水等へと被害がだんだん大きくなることがあります。基本的にはツララができなければスガ漏れも発生しないので、ツララ防止がそのままスガ漏れ防止となります。

勾配屋根スガ漏れの発生

雪庇

陸屋根や緩勾配屋根の積雪位置が風によって移動し、風下側の屋上から庇状にはみ出すのが雪庇です。雪は粘着性を持っているため、大きくはみ出し、自重に耐えきれなくなった時に地上に落下して被害をもたらします。
雪庇を防止するために、その地域の積雪量に応じたパラペットの立ち上げ高さを設定します。この他、パラペット部分の風速を上げ雪を吹き飛ばす仕掛けにより防いだり、パラペットの笠木に電熱線を仕込み、雪庇が大きくならない内に切り落とす等の方法があります。
施設配置計画にあたっては、冬期の卓越風を事前に調べ、雪庇の発生場所を想定するとともに、雪庇の落下が予想される範囲には通路、駐車場、工作物等を設けない等配慮します。

勾配屋根雪庇防止方法

巻き垂れ

勾配屋根に積もった雪が少しずつずれ下がり、屋根の軒先から押し出された雪やツララの先端が建物側に向けて曲がってくるのが巻き垂れです。
屋根裏と室内との間の断熱を確実にし、雪が滑り落ちやすい屋根材と適度な屋根勾配を確保すれば巻き垂れは防止できます。

勾配屋根ツララの発生

第5章 外部と開口部を設計する


外装周りの勘所

外装の構成

  • 出入り口等の落雪
    出入り口や、人が通る場所の外壁面は雪が落ちてこない形状とするか、屋根や庇を設けて落雪から人や物を守る計画とします。
  • 勾配屋根の雪
    隣地に近い建物では、隣地側に雪が落ちる屋根形状としないようにします。
    雪止めは雪がじわじわと滑落する力に耐えられるよう、堅固なものにすると同時に下地への固定方法に注意します。
  • 融雪装置の使い方
    笠木や軒先に融雪装置を設ける場合、冬期間はヒーターの電源を常時入れておきます。また、溶かした水は樋に集め、ドレン管は外壁の外側ではなく室内側に設置します。
  • 開口部のとり方
    窓等の開口部は断熱性能上の弱点となる部分であり、開口面積が少ないほど断熱効率は良いですが、閉鎖的な空間になりがちです。
    高断熱ガラスやエアフローウインドゥ等の手法をうまく活用することで、比較的自由な開口部計画が可能となります。
  • 窓周りの雪
    彫りの深い窓台や出窓の上部は、積もった雪の落雪によるトラブルを招かないよう60°以上の勾配として、雪が積もらない納まりとします。
  • 床付きサッシの床面結露
    床まであるサッシを設ける場合、湿度の高い病院等では床面が結露する心配があります。金属建具枠には断熱材を充填し、屋内側床スラブ上面(仕上げ材下面)も外壁面から断熱補強を行うようにします(札幌周辺では600mm)。

外装材と納まり

  • コンクリート外壁の目地
    コンクリート外壁にクラックが発生すると、そこからの浸透水が凍結膨張し、外装破壊に繋がります。外壁面積が25㎡の範囲内に伸縮目地を必ず設けるようにします。
  • シールの位置
    シールは側面シールを原則とします。シールは切れることを前提に、ダブルシールやフラッシング(金属製の雨押さえ)で水の浸入を防ぐようにし、浸入した場合に備え、外部へ排水するルートを外装設計時に考慮します。
  • 石の吸水率
    大理石や軟石といった吸水率が高い石材の外壁使用は避けるようにします。使用する場合は、撥水処理をしたり、厚みを十分確保する等の配慮が必要です。また、雨がかりを避け、通気層を設けて内部からの湿気もあわせて排出するようにします。
  • タイルの吸水率と使用箇所
    外壁タイルには、原則として吸水率が1%以下の磁器質タイルを使用します。パラペット天端部や斜めの外壁部、奥行きの深い窓の窓台や軒天井部は、浸透水による凍結膨張により、モルタルごと落下する危険があるためタイル張りを避けます。

開口部の設計

二重サッシ

北海道では、結露防止等の目的から外側にアルミサッシと単層ガラス、室内側に樹脂製サッシと複層ガラスを組み合わせた二重サッシ・三層ガラスが主流となっています。単層ガラスによる二重サッシは、内・外サッシのガラス間隔が目安として100mm以下であれば、サッシ間の中空層での過度の対流発生が抑えられ、複層ガラスと同等の断熱性能が期待できコールドドラフトも少なくなります。
遮音性能は、外部サッシのガラス厚を5mm、室内側は3mm+空気層12mm+3mmの複層ガラスという一般的な仕様でTs-35以上の性能を期待でき、都市部のホテルでも十分対応できます。

二重サッシの一般的な納まり二重サッシの一般的な納まり

ダブルスキン方式

ダブルスキン方式は、二重サッシの中空スペースを、半屋外の熱環境としたもので、外側に単板ガラス、室内側に複層ガラスのサッシを設けて必要な断熱性能を確保する考え方で、いわば縁側空間をガラスで囲ったかたちといえます。

ダブルスキンの例ダブルスキンの例

エアフローウィンドウ方式

エアフローウインドゥ方式は、外側を高断熱とした上で、室内側を簡易なサッシとして中空スペースをリターンエアの経路とする等してペリメーター部の放射環境を向上させ、室内への熱負荷を低減させるもので、断熱性能が高くコールドドラフトも問題ありませんが、内窓を開閉し、清掃を可能とすること等に留意する必要があります。

エアフローウィンドウの例エアフローウィンドウの例

玄関と風除室

風除室の形状

風除室の広さは最低4m×4m程度は確保したいですが、利用者の歩行速度・使用頻度を考えて寸法を決めます。このとき、奥行きを十分に確保することが特に大事です。
建物の用途によっては風除室の二重化が望ましいといえます。二重の風除室は風の吹き込みを防止する上で極めて効果的で、風除室前が外来患者の待合ホールになっている医療施設等では特に設置を検討すべきです。

二重化した風除室二重化した風除室

風除室の暖房

玄関のすぐ内側が待合ホールになっていることが多い病院等の場合は、できれば風除室も暖房すべきです。風除室の暖房としては、不凍液回路による床暖房・ファンコイルユニット・パネルヒーター等を用います。外部のロードヒーティング設備を安易に延長すると降雪のない時は、暖房にならないので注意が必要です。

風除室の結露防止

風除室の扉の枠周りや召合わせ部分にはネオプレンゴム等のパッキングを設けて隙間風を防止します。このとき、屋内の加湿された空気が風除室に流入して結露が生じないようにするには、内側の扉を気密にし、外側は通気仕様とする必要があります。

人と物の出入口

人の出入り

  • 通用口
    通用口には必ず庇を設けます。夜間や不定時に利用される通用口の周りはロードヒーティングができれば理想ですが、コスト上等の理由で難しい場合は、風・雪の吹き込みを軽減するため、できるだけ大きな庇を設けるようにします。
  • 避難通路と出口
    避難経路となる廊下・階段は、単純で分かりやすい位置が望ましいです。避難出口に限らず出入口は、冬期、短時間で雪にふさがれる恐れがあるので、吹き溜まりを避けることのできる位置に設けるようにします。
  • 屋上の避難器具への通路
    高層階の足元に大きい低層部をもつ建物の場合、避難器具を低層部の屋上に設置することがあります。この場合、屋上避難路を示す床面マーキングと手摺の設置が必須ですが、さらに冬期に備えてロードヒーティング等の積雪対策が必要となります。
  • 屋上の出入口
    施設管理者が屋上の設備機器やルーフドレンの点検等を行うために設ける出入口は、外開き扉の場合、積雪時にも扉が開けられるように扉の下端を屋上レベルから50cm程度上げます。この扉を内開きとする場合もありますが、その場合には建具周りの水仕舞いを確実に行います。
  • 出入口の扉
    外部に面した扉は、気密性の高い断熱仕様とし、ヒートロスを最小限にとどめるとともに扉表面の結露を防ぐ配慮をします。開き勝手は、外開きは積雪により開かないことがあるので、内開きまたは引き戸とします。避難出口のように外開きとせざるを得ない場合は、ロードヒーティングや庇の設置等によって扉開放部の積雪を防ぐ手立てを講じます。外部に面した機械室や塔屋等の扉を、壁の内部側に取付けて扉下枠の皿板を壁厚分の幅広にすると、その上面に雪が積ったり凍結したりして、出入りの際に足が乗ったとき滑って危険です。皿板下部の小壁は外部側にずらして皿板を小さくし、やむを得ず幅広の皿板となる場合は、皿板の水勾配を緩くし、表面に滑り止め加工を行うよう配慮します。
通用口周り通用口周り
屋上の避難器具への通路屋上の避難器具への通路
外部への出入口外部への出入口

第6章 室内環境を設計する


断熱の設計

断熱材の厚さ

断熱材の厚さは、断熱性能を決める上で重要な要素です。実際には建物ごとの用途・地域・方位等の諸条件に応じた断熱計算等の検討を行い決定しますが、北海道における一般的な建物の断熱厚さは、PF板材換算で、屋根100mm・壁50mm程度が望ましいです。なお、屋根の外断熱に使用する断熱材は、防火基準上、厚さを50mm以下に制限される場合があります。これで断熱性能が不足する場合には、内側にも断熱を設ける内断熱工法を併用します。

外皮の断熱

断熱上の留意事項

  • ヒートブリッジ
    断熱材を施すとき、その切れ目(断熱断点)をつくらないことが原則です。一般的には内断熱より外断熱のほうが断熱断点を少なくできます。断熱材がバルコニー等の出で途切れるヒートブリッジは冬期の内・外の気温差が大きい場合、結露の原因となるので注意が必要です。
  • 夏型結露
    夏期に外気温が一気に上昇して湿気を含んだ空気が開口部等から入り込むことにより床、壁等の表面で結露が発生することがあります。これは床、壁等の蓄熱容量が大きいため、これらの温度上昇が外気温の上昇に比べて遅いことにより生じるものです。

内断熱と外断熱の特性

  • 耐久性
    外断熱の場合、構造躯体が断熱材等で保護されるので、風雨による劣化や温度差による膨張・収縮の影響が緩和され、基本的にその耐久性は伸びるといえます。
  • オーバーヒート
    断熱性能が高い建物では熱の流出量が少ないので、日射によって室内温度が高くなり過ぎることがあります。このような室温上昇の緩和が難しい状態をオーバーヒートといい、夏期ならば太陽が沈んでも暑さが残る等の原因となります。日射を適当に遮る工夫等をし、場合によってはナイトパージの併用等を考えます。
  • イニシャルコストとランニング・ライフサイクルコスト
    イニシャルコストでは、外断熱の方が内断熱よりコスト高といえます。しかし、ランニングコストは、外断熱の方が、断熱断点が少ない、熱負荷の平準化が容易になって冷暖房機の運転効率がよい等から、内断熱より省エネルギーといえます。
内断熱工法と外断熱工法の比較内断熱工法と外断熱工法の比較

結露とその対策

開口部周りの表面結露

建築部位で問題になる表面結露は、窓等開口部廻りのガラス面やサッシ面におけるものです。この結露対策としては「当該部位の温度を露点以上に保って結露させない」「結露水を実害のないよう処理をする」の二つの考え方があり、前者では、①高断熱ガラスと高断熱サッシの採用 ②2重サッシ、ダブルスキン、エアーフローウインドウの採用 ③窓下に放熱器の設置 ④ガラス・サッシ面に温風を当てる 等の方法で、後者については、サッシ下枠にガラス面等の結露水を一旦受けて徐々に空気中に蒸散させる「結露受け」を設ける、また、その結露受けから配管等で結露水を一般排水ルートへ導くといった方法で対応します。

外皮の内部結露

内部結露の対策には「室内からの湿気を通さない」「湿気を排出する」の二つの方法があります。「湿気を通さない」については、外部に比べて高温高湿な室内側に防湿シートを施す方法がありますが、施工中の損傷やスイッチ等の開口部があり完全な防湿は難しいので、「排湿する」工法と併用するのが現実的な解決法といえます。「排湿する」には、外断熱と組み合わせた通気層工法、木造住宅における通気層工法、あるいは透湿性のある外壁塗装材の採用が有効です。

コールドドラフトと加湿・結露

コールドドラフト

  • コールドドラフトとは何か
    冬期に、暖房室内の空気が、外気で冷やされた外壁や窓ガラス面に触れることにより温度が急激に低下し、冷気流となって降下する現象をコールドドラフトといいます。これが部屋の内部に流れ込むと、足元が寒く 感じられて不快感を生じます。
  • 一般居室とコールドドラフト
    コールドドラフトの防止には、外壁等の断熱を十分に行い、外壁等の室内側表面温度を室内温度に近づける配慮が必要です。開口部は、断熱サッシと複層ガラス等高断熱性ガラスの採用やダブルスキンの採用といった対策が望まれます。また、開口部の下部に暖房設備を施して、その上昇気流でコールドドラフトを抑制する方法もあります。このとき、ラジエーター、パネルヒーターといった放射型暖房は、暖気の上昇気流による自然対流の利用が可能なので、送風機を併用する暖房方式に比べてコンパクトでありながらエネルギー効率がよい方式といえます。
    最下階床や風除室、倉庫・車庫等外気温に近い室温の空間に接する部分の室内側も、配慮が必要です。特に、下階がピロティの場合は、ピロティ上部を断熱天井とした上で天井内に放熱器を設置し、天井内温度を目安として5℃以上に保つのが望ましいです。
  • 吹抜け空間とコールドドラフト
    外気に面した大きなガラス張りの吹抜け空間等では、ガラス面からのコールドドラフトが勢いをもって床面に降下し足元を襲うことがあります。これを防ぐには、大ガラス面の足元だけでなく中間高さのサッシ水平部材にもパネルヒーターを組み込む必要があります。
一般居室とコールドドラフト一般居室とコールドドラフト
ピロティ部とコールドドラフトピロティ部とコールドドラフト
吹抜け空間とコールドドラフト吹抜け空間とコールドドラフト